言葉よりも先に伝わるもの
経営者の感情が職場をつくる
「ありがとう」と言いながら、心の中では少しイライラしている。
「大丈夫ですよ」と笑いながら、実は相手に対して不満を持っている。
こういうことって、ありませんか?
僕はあります。
言葉ではきれいなことを言っているのに、心の中ではまったく違うことを思っている。
そして不思議なことに、それって相手に伝わるんですよね。
今回の講話を聞いていて、一番心に残ったのはここでした。
人は言葉だけを受け取っているのではなく、その奥にある感情や空気まで受け取っている。
これ、経営者にとってはかなり大事な話だと思います。
経営者やリーダーは、日々いろんなことを考えています。
売上のこと、社員のこと、お客様のこと、家族のこと、将来のこと。
外から見ると堂々としているように見えても、心の中では焦っていたり、不安だったり、孤独だったりすることもあります。
「なんで動いてくれないんだろう」
「どうして分かってくれないんだろう」
「結局、自分がやるしかないのかな」
そんなふうに思いながら、表面上は優しく声をかけている。
でも、その時の空気って、たぶん社員さんにも伝わっています。
口では「任せるよ」と言っていても、心の中では「本当に大丈夫かな」と疑っている。
口では「ありがとう」と言っていても、心の中では「もっとやってくれたらいいのに」と思っている。
これでは、言葉に力が乗らないんですよね。
職場の空気というのは、制度や仕組みだけでできているわけではありません。
もちろんルールも大事です。
マニュアルも大事です。
評価制度も大事です。
でも、それ以上に大きいのは、そこにいる人の心の状態ではないでしょうか。
特に、経営者やリーダーの感情は、思っている以上に職場全体に影響します。
機嫌が悪い社長がいるだけで、事務所全体がピリッとする。
反対に、明るく落ち着いたリーダーがいると、なぜかみんなも安心する。
これって、特別な話ではなく、どこの職場でもあることだと思います。
だからこそ、まず整えるべきは相手ではなく、自分の内側なのかもしれません。
もちろん、いつも明るく前向きでいましょう、という話ではありません。
そんなこと、できませんよね。
腹が立つ日もあります。
落ち込む日もあります。
不安で眠れない日もあります。
人間ですから。
大事なのは、その感情をなかったことにしないことだと思います。
「ああ、今の自分は焦っているな」
「本当は分かってほしかったんだな」
「期待しすぎて、勝手に苦しくなっていたのかもしれない」
そうやって、自分の内側を一度見てみる。
それだけで、少し呼吸が深くなります。
すると、不思議と相手を見る目も変わってきます。
「なんで動かないんだ」ではなく、
「どうしたら動きやすくなるだろう」
「なんで分かってくれないんだ」ではなく、
「自分の伝え方はどうだっただろう」
そう考えられるようになる。
ここが大きな違いなんですよね。
経営って、数字をつくることだけではありません。
人の心が集まる場所をつくることでもあります。
その場所に、どんな空気を流すのか。
その空気の出どころは、案外、リーダー自身の心なのかもしれません。
同じ「ありがとう」でも、心から出た言葉は届きます。
同じ「お願いします」でも、信頼を込めた言葉には力があります。
同じ「任せるよ」でも、本当に信じているかどうかは、相手に伝わるものです。
そう考えると、リーダーの仕事は、指示を出すことの前に、自分の心を整えることなのかもしれません。
朝、職場に入る前にひと呼吸する。
社員さんの顔を見る前に、自分の表情を整える。
何かを伝える前に、「今の自分はどんな気持ちで話そうとしているのか」と確認する。
ほんの小さなことです。
でも、こういう小さな実践が、職場の空気を少しずつ変えていくのではないでしょうか。
僕自身も、つい外側に原因を探してしまいます。
社員がもっと動いてくれたら。
お客様がもっと分かってくれたら。
環境がもっと良くなれば。
そんなふうに考えてしまうことがあります。
でも、今回の講話を聞いて、改めて思いました。
問題は外側にあるように見えて、実は自分の内側にヒントがあるのかもしれない。
もちろん、すべてを自分のせいにする必要はありません。
でも、自分の見方、自分の感情、自分の在り方を整えることで、現実の受け止め方は変わります。
そして、受け止め方が変われば、言葉が変わる。
言葉が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、職場の空気も変わっていく。
そういう順番なのかもしれません。
今日、自分はどんな空気を職場に届けているでしょうか?
明るさでしょうか。
安心感でしょうか。
それとも、焦りや不満でしょうか。
まずはそこに気づくことから始めたいですね。
職場を変える第一歩は、大きな改革ではなく、リーダー自身の小さな内面の実践から。
今日もひと呼吸おいて、心からの「ありがとう」を届けていきたいと思います。

