人はなぜ、将来の方向性に迷うのか。
斉藤尚志さんの講話で特に印象に残ったのは、このシンプルで深い問いだった。
私たちは「何をしたいかわからない」「目標が決まらない」と言いがちだ。
しかし実は、迷う理由は“行き先”ではなく、“今どこに立っているのか”が曖昧だからだという。
言われてみれば本当にその通りで、急に視界が開けたような感覚になる。
■スタートが見えないから迷う
斉藤さんの言葉はこうだ。
「出発地点がわからないから、方向性に迷うのです」
卓球の愛ちゃんは、3歳でラケットを握らされた瞬間が“スタート”だった。
だが私たちの多くは、家庭環境や友人関係、偶然の選択の積み重ねの中で、いつの間にか今の場所に立っている。
その結果、自分がどこから来たのかが見えなくなり、将来もぼんやりしてしまう。
倫理法人会の「元を忘れず」という言葉と重なる部分だ。
原点(元)を見失うと、人は判断基準を失い、迷いやすくなる。
■偶然が「点」をつくり、後からつながる
講話の中では、計画された偶然性理論の話も紹介された。
人生の8割は「予測できない偶然によってつくられる」という考え方だ。
たしかに、ジョブズが偶然学んだカリグラフィーが後のMacのデザインにつながったように、
私たちの人生にも「後から意味がわかる点」がいくつもある。
しかし、その点を“意味のある点”として拾えるかどうかは、
自分の原点が見えているかどうかで変わる。
原点がある人は、偶然の出来事を「道のヒント」としてつかめる。
逆に原点が曖昧な人は、偶然を偶然のまま流してしまう。
■「今ここ」もまた新しい始まり
私たちはつい、「最初のスタートが分からないからダメだ」と思いがちだ。
だが斉藤さんの話を聞いていると、
“今この瞬間も出発点になる”
ということに気づく。
過去の選択がどれだけ曖昧でも、
今の地点を「ここがスタートだ」と認めた瞬間から、未来は決め直せる。
方向性に迷うのは悪いことではなく、
むしろ 自分の原点を見つけ直すためのサイン なのだ。
■迷ったときにこそ思い出すべきこと
・自分が大切にしてきたことは何か
・どんな偶然に導かれてここに来たのか
・今日のこの瞬間を新たなスタートと捉えられるか
この視点を持つだけで、迷い方が変わる。
迷うことが“停滞”ではなく、“再スタートの準備”になる。
将来の方向性が見えないという悩みは、人生の失敗ではない。
ただ少し立ち止まり、
「自分の出発点はどこか?」
と静かに問い直す時期に来ているだけなのだ。
原点が見えたとき、
今までバラバラだった経験が線になり、
その先に続く道がゆっくりと姿を現し始める。


